迷ったら刊行順。ただし、4冊をそろえてから読む必要はない

伊坂幸太郎の殺し屋シリーズは、名前も舞台も違うため、続き物なのか、どの一冊から試せるのか迷いやすいシリーズです。作品同士のつながりも順に知りたいなら、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『777 トリプルセブン』の刊行順を、つぎの一冊編集部では勧めます。

一方、KADOKAWAのシリーズ紹介では、世界観や登場人物を共有しながらも、各作品は独立していると説明されています。一つの長編を4巻に分けたものではありません。まず一冊だけ選ぶなら、シリーズの原点に関心があれば『グラスホッパー』、新幹線の中の駆け引きなら『マリアビートル』、殺し屋の家庭での顔なら『AX アックス』、ホテルで起こる騒動なら『777 トリプルセブン』が入口になります。

読む順番と、自分に合う入口を分けて考える

  • つながりをどこまで追いたいか:前の作品を知ってから次へ進みたいなら刊行順。今は特定の設定だけ気になるなら、その一冊の詳細から確かめます。
  • 何に注目したいか:複数の人物が同じ対象を追う状況、新幹線の車内、家族に見せない仕事、ホテルでの出会い。同じシリーズでも、興味の入口は変えられます。
  • 今、どんな題材を読みたいか:いずれも殺し屋や殺人を扱う作品です。気の利いた会話や家庭の場面があっても、暴力のない読書を約束するものではありません。つらい事件から距離を置きたい日は、別の作品を選ぶ判断も大切です。

4作品の刊行順と、ここで紹介する文庫版

以下はシリーズの刊行順です。添えた年月日とページ数は、当サイトの書籍ページから案内する角川文庫版の情報であり、単行本の初刊日ではありません。版を取り違えないためにISBNも記載しています。

  • 1.『グラスホッパー』:2007年6月23日発売、352ページ。ISBN 9784043849017。まずシリーズの出発点を読む選択。
  • 2.『マリアビートル』:2013年9月25日発売、592ページ。ISBN 9784041009772。新幹線に集まった人物たちの目的を追う選択。
  • 3.『AX アックス』:2020年2月21日発売、384ページ。ISBN 9784041084427。兜という人物の仕事と家庭に注目する選択。
  • 4.『777 トリプルセブン』:2026年6月16日発売、368ページ。ISBN 9784041166642。七尾が関わるホテルの騒動を読む選択。

ページ数は手元に置く本の分量を比べる目安です。短い本ほど読みやすい、一定の時間で読み終わる、という意味ではありません。特に『マリアビートル』は紹介する4冊の文庫版では分量が多いため、長い物語に付き合いたい時の候補として考えると選びやすくなります。

原点から人物の思惑を追いたいなら『グラスホッパー』

元教師の鈴木は妻を殺した相手への復讐を考えていましたが、その相手の死を目撃し、「押し屋」と呼ばれる人物を追います。鯨や蝉という殺し屋も同じ人物を追う、という出発点です。KADOKAWAの作品紹介で、立場の違う三人の思いが交わる設定を確認できます。

編集部が、順番で迷う人の最初の一冊にする理由は、後の作品との関係を先回りして調べずに、シリーズの原点から入れるためです。誰が何を求めて動いているかを整理することに関心がある人に提案します。集中が切れた時は先へ急がず、人物の目的を確かめて戻る読み方でも構いません。

今回は別の本がよさそうなのは、復讐や自殺に関わる題材を避けたい人です。「第1作だから必ず読まなければ」と無理をする必要はありません。原点を押さえることより、今受け止めたい題材かどうかを優先してください。

列車の中でぶつかる目的を追いたいなら『マリアビートル』

舞台は東京から盛岡へ向かう東北新幹線。木村、王子、蜜柑と檸檬、天道虫と呼ばれる殺し屋らが乗り合わせます。出版社の紹介でも、複数の人物がそれぞれの目的で動く車内が物語の中心になっています。

入口にする基準は、登場人物の多さを避けたいか、それとも「同じ列車にいるのに、求めるものが違う」状況に興味があるかです。編集部では、誰の狙いが誰の邪魔になるのかを追いたい人に提案します。一人の人物だけに気持ちを寄せて読みたい日は、『AX アックス』の設定を先に確かめる選択もあります。

592ページという分量に加え、子供への危害や復讐に関わる設定もあります。旅の移動中に読めばちょうどよい、などと読了時間を決めず、いったん中断しても続けたい題材かで判断してください。気になる人物を見失いやすい時は、まとまった読書時間を取れる日に回してもよいでしょう。

仕事と家庭の二つの顔が気になるなら『AX アックス』

兜は、家族には裏の仕事を明かしていない殺し屋です。表向きは文房具メーカーに勤め、家庭では妻に気を遣う父親でもあります。息子が生まれた頃から殺し屋を辞めたいと思いながら仕事を続ける、という設定を出版社の案内で確認できます。

編集部では、殺し屋同士の勝負だけでなく、一人の人物が場所によって見せる顔の違いに関心がある人の入口にします。公式の目次は「AX」「BEE」「Crayon」「EXIT」「FINE」の五つ。読む途中に区切りを置きたい場合は、この章立てを目安にできますが、どの章も同じ長さ・重さだとは考えないでください。

家庭の話があることを、穏やかな気持ちになれる保証にはしません。殺人や暴力を避けたい人、仕事や家族の問題を今日は考えたくない人には、別の本がよさそうです。「家族ものだから安心」ではなく、兜の二つの生活を一緒に読みたいかが選ぶポイントです。

ホテルの騒動から試したいなら『777 トリプルセブン』

七尾が引き受けたのは、高級ホテルへプレゼントを届ける仕事。同じホテルには、優れた記憶力を持つ紙野結花が身を隠しています。この二つの出発点から、ホテルで何が起こるのかに関心を向ける入口です。

独立した一作として、ホテルという舞台にひかれたならここから選べます。ただし、七尾の登場作を順に読みたい場合は、『マリアビートル』から『777 トリプルセブン』へ進むのが編集部の提案です。KADOKAWAの刊行告知でも、前者の新幹線と今作のホテルのつながりが示されています。間の『AX アックス』を読んだことが、七尾の物語を選ぶ必須条件ではありません。

今回は別の本がよさそうなのは、登場人物との出会いをシリーズの最初から積み上げたい人です。その場合は刊行順へ戻りましょう。また、ホテルが舞台でも、接客や旅先での穏やかな交流を中心にした小説として選ぶと、求めるものとずれる可能性があります。

最初の一冊を決めたら、次は読後の関心から選ぶ

まだ決め手がなければ、『グラスホッパー』の詳細を一度見て、題材と合いそうか確認するところから始めてください。七尾が気になったら列車からホテルへ、殺し屋の生活の違いが気になったら兜へ。読後に痛快さを求めるか、人物の暮らしを考えたいかも手がかりになりますが、どの作品で何を感じるかは人によって異なります。

下の紹介書籍から詳細を開き、今すぐ決めない本は「読みたい」に保存できます。購入先へ進む時は、ここで示した文庫版・ISBNを確認してください。4冊を一度に買う必要はなく、まず一冊を選んでから続けるか考えて構いません。

シリーズ一覧では4作品を順番に、著者一覧ではシリーズ以外の登録作品も見比べられます。殺し屋という題材そのものが今の気分に合わなければ、診断から選び直してください。設定・版・巻構成は2026年9月16日に以下の出版社公式情報で確認し、向く人や読む順番の提案は編集部の選書判断として分けて記載しています。